スペシャル・トレンドレポート

予想通りの仏大統領選から、 6月総選挙後の見通しは?(松崎 美子氏)

2017年4月26日

4月23日(日)、フランスでは5年に一度の大統領選1回目の投票が行われた。今回の選挙を振り返ると、世論調査から出口調査、公式結果まで全てが「事前予想通り」の結果となったことが特徴であろう。

今回のコラムでは、1回目の選挙結果を踏まえながら、今後予想される展開を考えてみたい。

仏大統領選・事前予想と実際の結果

数多くの選挙を見てきたが、ここまで事前予想通りの結果となった選挙は記憶にない。11名の候補者の中、4人の接戦ということで、それら候補者の世論調査・出口調査・公式結果を比較して、さらに驚いた。どの予想も誤差が1~2%という正確さであった。

データ: フランス内務省ホームページ

 

1回目投票後のフランス政界での動き

投票終了後の出口調査結果が出ると、社会党のアモン候補と共和党のフィヨン候補が続いて敗北宣言を行なった。この2人はそれぞれが支持する政治的嗜好は正反対であるが、2人とも決戦投票では中道のマクロン候補を支持すると宣言。その後、フランス政界の重鎮たちも、一人の例外なくマクロン支持を表明している。

政界関係者の間でマクロン支持が多く出ているため、ユーロやEU離脱を掲げる極右政党出身のルペン候補にとって、5月7日(日)の決戦投票で大統領に当選することは、ほぼ絶望的だとも言われている。

決選投票のオッズを調べてみると、ここでも断トツ、マクロン優位であった。

 

データ: 数々の報道より

1回目投票で気になった点

有権者もマクロン大統領の誕生を望んでいるのか?それに関して気になった点を挙げてみたい。

説明に入る前に、上位4名の得票率合計(内務省午前4時公表)は84.83%となる。つまり、上位4名で全体の得票率の約85%を占めていたことになる。

そのうち、反EUを公約に揚げていたルペン候補とメランション候補の得票率合計は、41.17%。つまり上位4名に票を入れた有権者の48%が、EUに対し何らかの反感あるいは好意的でない気持ちを持っていることになる。

もうひとつは、上位4名の候補の中、エスタブリッシュメントの政党に所属するのはフィヨン氏だけである。それ以外の3名は反エスタブリッシュメントの候補者で、彼らの合計得票率は76.5%とかなり高い。この辺りにも、既存の2大政党に有権者が飽きてきたことが感じ取れる。

 
 

データ: フランス内務省ホームページ

マクロン大統領誕生となると・・・

1970年代からの歴代大統領を調べると、1981年のミッテラン氏以降全ての大統領は、2大政党の共和党か社会党出身者である。

2大政党以外の大統領は、ジスカール・デスタン氏のみ。そうなると、もしマクロン氏が当選すれば、1974年以来はじめての「エスタブリッシュメント政党以外の出身者」が大統領となる。そして、39歳という若さは、ナポレオン3世以来の若い大統領誕生となる。

 

総選挙後の見通し

5月7日(日)の決戦投票で、ルペン候補が大統領となることはほぼ絶望的となると、マーケットの関心は6月11、18日に実施される議会選挙に移るだろう。

 

コアビタシオン(ねじれ国会)の可能性

フランスでは2000年に憲法改正が行なわれ、大統領の任期が7年から5年に短縮された。そして、2002年から,議会選挙(総選挙)に先だって 大統領選挙が実施される慣習が定着するようになったため、コアビタシオンが生じる蓋然性は、大きく低下した。しかし、今年に限っては、大統領が伝統的2大政党所属でないこともあり、コアビタシオンとなる可能性が非常に高い。

マクロン氏は2009年まで2大政党のひとつ社会党議員であったが、そこから離れ、無所属となり、昨年「前進!」党を立ち上げた。設立してまだ1年の新党であるため、6月の総選挙で過半数議席を獲得することは、無理であろう。そして、「前進!」という党は右派・左派両方の議員が集まり中道路線を打ち出しているが、「フランスの政治には右か左だけで中道はない・・・」と言われているだけに、有権者がどう受け止めるか、まだまだ未知数の部分が多い。

総選挙の結果、与党は共和党を含む中道右派の連立、あるいは「前進!」党の少数派政権のいずれかになる可能性が高い。マクロン氏が社会党に所属していたことを考えると、もし「前進!」党の少数派政権となれば、社会党の協力なしでは政策運営が難しくなることも考えられる。

ちなみに、1970年以来、コアビタシオンが起きたのは3回だけ。

  • 第1次コアビタシオン(1986年~88年)
    社会党:ミッテラン大統領
    共和国連合:シラク首相
  • 第2次コアビタシオン(1993年~95年)
    社会党:ミッテラン大統領
    共和国連合:パラデュール首相
  • 第3次コアビタシオン(1997年~2002年)
    共和国連合:シラク大統領
    社会党:ジョスパン首相

フランスの大統領は有権者による直接選出で、アイルランドのような儀礼的な名誉職という位置づけでも、ポルトガルのような大統領と首相の権力2分割でもなく、「全能・議会制度の中心」という位置づけである。それ故、フランスの大統領は首相にさえも、自分の腹の内は見せないことはざらだそうだ。第1次コアビタシオン下では、ミッテラン大統領がシラク氏を首相に任命した際、外務大臣と防衛大臣は絶対にシラク首相に選ばせなかった話しが有名である。もし、6月の総選挙で中道右派が与党に就いたら、マクロン大統領はどのような形でコアビタシオンを取り仕切っていくのだろうか?非常に楽しみである。

 

ここからのユーロ

マクロン氏の単一通貨:ユーロに対する考え方は、通貨という位置づけをはるかに越えたヨーロッパが勇敢にも取り入れた大胆な実験というもので、世界の外貨準備金に重要な位置を占める通貨となると予想している。

1回目の投票結果を受け、ユーロは対米ドルで約2%上昇し、ドイツとの国債利回り格差(イールドスプレッド)も縮小し、買い安心感が出た。

 
 

データ:欧州中銀(ECB)ホームページ
注:4月21日と24日のプライスは、終値

ここから6月11、18日の総選挙までのユーロを考えるため、ユーロ実効レートをチェックしてみよう。チャートを見ると、1年以上に渡りピンク枠で囲んだレンジ内での動きとなっていて、黒い点線サポートを割り込んでいない。つまりまだ急落する地合いではなさそうだ。

 

チャート:欧州中銀(ECB)ホームページ

次にユーロ円の日足チャートに、ベガス・トンネル(144/169EMA)を載せてみた。大統領選の結果を好感し、「ユーロ/円」は窓をあけ、一挙にトンネルの上に踊り出た格好になっている。

 

このユーロ高のおかげで、ローソク足はピンクの12EMAの上での推移となっていて、(ローソク足が12EMAより上にいる間は)買いから入るほうが効率が良いことを意味している。しかし、本格的な買いシグナルとなるのは、12EMAがベガス・トンネルを上に抜け、同時にローソク足がトンネルの上で推移していることが条件となるため、まだまだ時間がかかりそうだ。しばらくは、12EMA(黄緑の点線丸)とローソク足との関係を見極めたいと考えている。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2017年4月26日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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