スペシャル・トレンドレポート

Brexitからの英ポンド下落で、英国経済のダメージは?(松崎 美子氏)

2017年4月14日

1カ月の日本滞在を終え、先週無事ロンドンに戻ってきた。帰ってきてからすぐに食料品の買い出しに行ったが、お花や一部の食料品価格が微妙に上がっていた。昨年6月の国民投票でEU離脱(Brexit)が決定されて以来、約18%も英ポンドの価値が下がったことを考えれば、輸入物価が上昇するのは当然であろう。しかし、昨年まではそれでも、大手スーパーが協力し、価格を抑える努力をしていたが、とうとう我慢の限界に達したのかもしれない。

今回のレポートは、Brexitを受け英国の経済がどのようなダメージを受けているのか?そして、それが今後どのような影響が出てくるのか、その辺りについて自分の考えを書いてみたいと思う。

ことごとく悪かった先週の英国経済指標

先週発表された英国の経済指標は、サービス業PMIを除き、全ての数字が前月より悪化した。その中でも私にとって衝撃的だったのが、貿易収支の悪化である。英ポンドの価値がこれだけ下がれば貿易収支は改善するのが当たり前と考えていたため、ショックは大きかった。

英国の経常収支は、1983年の黒字を最後に、それ以来ずっと赤字が続いている。特に2010年代に入ってからの赤字の増大ぶりには恐怖さえ感じていたが、Brexit決定後の英ポンド安の恩恵を受けると楽観していた私は間違っていたようだ。

 

今週発表された英国関連経済指標

今週発表される経済指標で、私が特に注目しているものが3つある。

▽3月分・英国小売教会(BRC)小売売上高

BRCが4月11日(火)に発表した3月分の小売売上高(調査対象期間:2月26日(日)~4月1日(土)の5週間)は、既存店ベース(チャートの青線)では前年比で1%の下落、総合(チャートの赤線)でも久し振りのマイナスとなった。もともと3~4月に発表される数字は、イースター休暇の都合でかなりブレが生じやすくなるが、それでも両方の数字がマイナス圏に落ち込むのは約1年振りである。

 

データ: 英小売協会(BRC)ホームページ

▽3月分・消費者物価指数(CPI)

同じく4月11日(火)に発表された消費者物価指数(CPI)は、予想:2.1~2.2%に対し、結果は前月と同じ2.3%に落ち着いた。

この結果を受け、2カ月連続で英中銀のインフレ・ターゲットである2%を超えたままであることに警鐘を鳴らすエコノミストが後を絶たない。インフレが上昇するということは、我々の賃金が実質的に目減りすることを意味し、否が応でも財布の紐は固くならざるを得ない。英国経済の7~8割を弾き出しているのは、個人消費を含むサービス業である。そのため、今後インフレが上昇すればするほど、実質賃金が目減りし消費不振となり、結果としてGDPは低迷する計算となる。

 

データ:英統計局(ONS)ホームページ

▽3月分・雇用統計(賃金上昇率に注目!)

英国中の市場関係者が待ちに待っていたのが、水曜日に発表された雇用統計、特に賃金上昇率である。前日に発表されたインフレ率よりも賃金上昇率が低くなれば、インフレ上昇による実質賃金の目減りに加え、賃金そのものが下がるというダブル・パンチとなり、ますますここからの英国景気の先行き見通しが悲観的になるからである。

今回の賃金上昇率は、ボーナスを含む全体額(Total Pay)は、予想2.2%に対し、2.3%。ボーナスを除く額(Regular Pay)は、予想2.1%に対し2.2%となった。一般的に「賃金上昇率」をチェックする場合、全体額(Total Pay)で見るエコノミストが多いが、英国は日本と違い、ボーナスが貰えるのは金融業と公務員くらいで、ほとんどの労働者はボーナスとは無縁である。そのため、英中銀金融政策理事会(MPC)の理事達は、ボーナスを除くRegular Payの数字を重視していると聞いたことがある。

いずれにせよ、前日発表されたCPIは2.3%であるため、Total Payでは2.3%と同率。Regular Payは2.2%となったため、「CPI>賃金上昇率」という関係に逆戻りしたことになる。

今後もしこの関係が継続した場合、インフレ上昇による実質賃金の目減りと平行して、賃金上昇率も高止まりするため、個人消費に向かうお金が減り小売売上高などの代表される消費が不振となるだろう。結果、GDPの伸び率も鈍化に向かうことになりかねない。

データ: 英統計局ホームページ

ここからのマーケット

これだけ英国経済の先行きに対し不透明感が増してきた局面ではあるが、最近のマーケットでの「旬な材料」はシリアや北朝鮮をはじめとする地政学的リスクであり、それに向け為替や債券市場で動きが出てきている。

つまり足元の相場は「リスク・オフ」「有事の相場」となっていて、典型的な動きとして、①資金は株から安全性の高い国債へ移動、②典型的な安全資産として、米国債が挙げられる(国債利回り低下)、 ③スイス・フランや円が買われやすいなどの点が特徴として挙げられる。

英ポンドはリスク・オフ相場ではあまり注目されず、米ドルの動きに翻弄されるのが精一杯だ。

 
 

データ: 英中銀ホームページ

上図は英中銀が毎日公表している英ポンド実効レートのチャートである。現在のレートは、黄緑の点線で示したペナントの上限で頭を押さえられている状態だ。もし、このレベルを上抜けできなければ、一旦ペナントの下限までの調整があってもおかしくない。

 

「英ポンド/米ドル」の日足チャートも実効レートと同じようにペナント型となっている。その上限となる1.2580/85ドル辺りが重要で、そこを上に抜けなければ、1.22ドルLowくらいまでの調整を予想している。逆にその上限を上に抜けるようであれば、米ドル安がかなり進行していることが予想され、「米ドル/円」の下げが非常に気になるところだ。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本レポートは2017年4月14日に松崎美子氏より発行されたもので、情報提供のみを目的としております。
レポートの内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、開催当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、レポート内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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