トランプ次期米大統領の3つの政策
昨年11月の米国大統領選挙からのトランプ相場は、強い米国を掲げたトランプ次期大統領による期待に起因している。トランプ次期米大統領の政策としては、「本国投資法(HIA)」・「財政刺激策」・「米国保護主義」の3つで、米国上下院のネジレが解消されたことを考慮すると、これらは実施される可能性が高いと考える。
しかし、政策が実行されるまでには、当然タイムラグがある。そこで、マーケットをどのように先読みするのかが重要になるのではないか。
トランプ氏肝いりの「本国投資法(HIA)」が実施されれば、2005年にブッシュ大統領が実施した時より3倍近い規模ともいわれているが、当然企業としては、期日決定後の資金回帰となるので、その前段階で資金移動は行われないはずである。しかし、実需の動きの前に動き出すのがマーケットであると考えると思惑が先行しそうだ。
「財政刺激策」についても、同様に2017年後半に実行される可能性が高い。予想しにくいのが、「米国保護主義」である。中長期的には、「強い米国」となり、「強い米ドル」となるだろうが、対中国や対日本などの攻撃が強すぎれば、目先の米国経済にとってもマイナス要因となる。
以上を踏まえると、「米ドル/円」は、目先調整の下押しが入りつつ、その後は米ドル高と予測する。
中期展望:「米ドル/円」は調整の下押し

中期的に「米ドル/円」の動きを予測した場合、昨年11月からの上昇が一本調子過ぎるため、調整が入る可能性がありそうだ。
2016年12月15日(木)の高値118.66円を2017年1月に上抜けない場合、2016年の安値98.90円から118.66円までの上昇幅に対し、23.6%の114.00円レベル、38.2%の111.12円レベル前後の下押しはありえる。
仮に、下落に勢いがついて、前述の111.12円を下抜けした場合、週足の一目均衡表の雲に突入する可能性があり、その後雲を上抜けできずに停滞した場合は、回復まで時間がかかる可能性もある。
時間経緯で考えると、1月20日(金)の米国大統領就任式までは、不透明感が強く、方向感が出にくいため、調整による下押しの可能性が高いと予測する。
長期展望:「米ドル/円」は上昇予測

2017年の「米ドル/円」を考えると、やはり米国経済が最初に注目されることになるが、今年は、欧州においては選挙イヤーとなり、昨年からのグローバリズムからポピュリズムに傾倒していることから、欧州危機の可能性が高まりそうだ。「ユーロ/米ドル」で考えた場合、ユーロ売りからパリティーへと向かい、米ドル高となる可能性があるが、「ユーロ/円」の下落に勢いが出た場合は「米ドル/円」上昇の重石となる。
また、昨年EU離脱を決定した英国においても、ハード・ブレクジットとなれば、しばらくの間は、英ポンド安となる可能性が高く、「英ポンド/米ドル」の下落による米ドル高と「英ポンド/円」下落による円高がどのように相殺されるかがポイントになりそうだ。
しかし、最終的には米ドルの独歩高になる可能性が強く、「米ドル/円」は長期テクニカルでみると、2011年の安値75.57円、2015年の高値125.85円、2016年の安値98.90円が基調になり、フィボナッチ・ターゲット(エクスパンション)で上値拡張の計測をすると、38.2%が118.10円レベル、61.8%が129.97円レベル、100%が149.18円レベルとなり、118円レベルは、2016年の12月に達成しているので、129.97円レベルが2017年の上値目標になると予測する。
遠藤 寿保プロフィール

- 遠藤 寿保(えんどう としやす)
- 98年日本初のFX事業開始から、Web広告やセミナー運営、リスク管理啓蒙などFX業務全般に携わる。数多くの一般投資家と接しながら、現在、YJFX!にてFXエバンジェリストとして情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。