スペシャル・トレンドレポート

2017年も利上げ見込みで、 米ドルの優位性は対円で継続!(竹内 典弘氏)

2016年12月19日

妻:「住宅ローン、金利が低い時に契約出来てよかったわね!」

夫:「本当に今から審査だったら、審査中にも更に金利が上がってしまったかもしれないな」

妻:「少し得した気分ね!」

夫:「そうだな。君のおかげでクリスマスは盛大にできそうだ、いつもありがとう!」

これは日本国内でなく、米国での会話だ。短期金利の上昇の前に住宅ローン(現地ではMortgage)の契約を終え、年末を前に安堵の様子がうかがい知れる。

足元で短期金利のすう勢を色濃く映し出す、「米2年債金利」の上昇が加速している。本稿執筆時点の12月15日(木)午前7時現在(チャートでは14日(水)の米国引け、同時刻)でリーマンショック直後の2009年以来の水準である1.267%まで急上昇している。

出所:筆者作成

今や市民生活に金利は切っても切り離せない存在だ。為替取引をする者にとっても高金利通貨の選択は至上命題でもあり、スワップで金利だけを稼いでいくプロ顔負けの投資家も存在するくらいだ。金利上昇が見込まれる通貨群は、昔から利上げ局面では大いにもてはやされてきたというのも納得がいく。

支払いでは低金利に、そして運用は高金利に、という構図が極めて鮮明となっている。ここにきてどうやら利上げサイクルに回帰、そして来年以降も継続して複数回の利上げが想定される通貨が出てきた、それが「米ドル」だ。

以下は2004年以降の「米ドル/円」とフェデラルファンド金利(米国の公定歩合)の推移であり、金利上昇局面ではそれを先取りし、以降の米ドル高が鮮明だった。

出所:筆者作成

特にこうした利上げサイクルの初期では、利に聡い投機筋の売買は活発化する。以下はIMMの投機ポジションの推移である。2016年1月5日(火)に円買いに転じ、その後「米ドル/円」は約20円強の下落を演じた。その後一度もこのポジションは円売りにはなっていなかったが、それが(正確には)11月29日(火)に円売りに転じた。

チャート : こちらの画像より筆者作成

巷でよくいうヘッジファンドは銀行、証券会社などの金融機関と相対で売買を行うから、このIMMのポジションには普通反映される事はない。これは長年生き残った個人投資家以上、ヘッジファンド以下の猛者のポジションと解釈するのが賢明だ。

このポジションの傾きは、長年筆者がマーケットの方向性を見定めるうえで、珍重してきたツールの一つといっても過言でない。そのポジションが円売りに転じた意義は極めて大きい。

FRBは12月14日(水)のFOMC会合後、1年ぶりの利上げに踏み切った。事前に利上げはほぼ織り込まれ、利上げによる混乱は回避された。声明文を読み解けば、景気見通しに大きな変化がない中で、9月のFOMCまでは2017年度2回と見込まれていた利上げが3回に修正された。

この修正はややサプライズで、直後の「米ドル/円」には、短期投機筋を中心とする大きな米ドル買いが持ち込まれた。

チャート : YJFX!外貨exより筆者作成

イエレン議長の会見では、前回会見で強い口調で中銀の独立性を叫んだことから、トランプ(以下、T)次期米大統領政策関連への質問が続出した。「T氏のツイートにはバイアスを受けることもなく、ノイズとも感じない。雇用市場のスラック(緩み)は減少、生産性の向上を継続して追及」と冷静に従来のスタンスを強調していた。

景気判断が不変のなかでの利上げペースの修正は、米大統領選以降に急激に進捗した米長期金利の上昇、そして今後明らかになるであろうT次期米大統領の政策並びにその実効性までも加味したものだ。

筆者が特に重要と考えているのは、T大統領就任後の政策を(大統領権限で可能な通商政策、移民政策等を除き)まだ何も決まっていないばかりか、その後の政策遂行力まで考慮して声明文の中に織り込んでしまった点で、やや不確実性を含んでいる。この点から、今後このFRBの金融政策は(上下双方向に)大幅な修正を迫られる可能性も大といえそうだ。

では利上げは継続されるのか、今後の展開は、まずは来年1月20日(金)のT大統領の正式就任、そしてその後100日の経過を見定める必要がある。ただ選挙中/選挙後ではT氏自身の態度・表現は大きく変化しており、選挙期間中の暴言・中傷などは関心を引き寄せるための巧妙な手口と分析する者もいる程だ。

だとすれば、既にTPPからは離脱し、2国間協定での貿易交渉を推進すると明言していることから、中国に対しての「大統領就任後、即為替操作国に認定」との発言も交渉テーブルへの狡猾な誘導とも解釈できる。

やや気がかりなのは、T次期大統領がオハイオ、ミシガン、テキサスといった製造業の集積地で白人労働者階級からの絶大な支持で当選を決定づけている点だ。金利高、米ドル高は製造業には逆風であり、仮に保護貿易主義に傾斜すれば、日本の様な経常黒字国では為替レートの通貨高(日本の場合でいえば円高)をもって輸出数量を調整してきた歴史も存在する。

出所:筆者作成

こうした不透明要因はしばらく晴れることはないだろうが、来年以降、米金利上昇が複数回にわたり見込まれる反面、円は日本銀行によるイールドカーブコントロール下で金利上昇が抑えられている。これはグローバルでの金利上昇下でも、日米金利差は拡大するだけとの構図だ。

以上まとめると、2017年を見通した場合、為替取引を生業にする者にとって依然不確定要素は多い。T新大統領の就任後も政策発表ごとに軌道修正を迫られる可能性も高い。ただボトムラインとして米金利上昇下では米ドルの相対的優位性は揺るがず、対円では調整を交えながらも上昇基調維持と考えてよさそうだ。

竹内 典弘氏プロフィール

竹内 典弘(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。 1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。 相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2016年12月19日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、竹内典弘氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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