金融マーケット注目の米国大統領選挙
2016年11月8日(火)に行われた米国大統領選挙は、過去類を見ない程、金融マーケットが注目していたように感じる。事前の予想では、クリントン氏・トランプ氏の支持差は僅差から、直前の11月7日(火)に「クリントン氏のメール問題」が解消され、クリントン氏優勢となり、「米ドル/円」は102円台半ばから104円台半ばまで強含んだ。開票は日本時間11月9日(水)の午前中からお昼ごろにかけておこなわれ、その時間帯は神経質な反応となった。そして、トランプ氏が第45代米国大統領となった。
事前の展開で、トランプ氏が当選した場合は、過激な発言などからリスクオン状態となり、株式市場は暴落し、「米ドル/円」はリスク回避を真っ先に受けやすくなっていた。当選結果はマーケットにとってサプライズで、「米ドル/円」も104円台後半から101円台までの大きな下落となった。目先の下値目標としては、大台である100円割れであり、今年6月につけた安値である98.90円も視野に入ってくる。
しかし、トランプ氏の政策を考えると、「強いアメリカ」を掲げ、減税や歳出増(インフラ投資)を前面に打ち出す財政赤字の拡大とインフレ抑制のための金融引き締めという組み合わせは、政策的には米ドル高につながる。また、トランプ氏は共和党ということもあり、上院・下院のネジレが解消されることもあり、政策実現のスピード感は高まる。一時的劇薬感で、株式を初めとした金融市場は混乱すると思われるが、目先のトランプ・ショックの後は、株式や「米ドル/円」は反転する可能性が高まるのではないか。
「米ドル/円」チャート分析

今回の下落は、米ドルが弱くて下落したというより、トランプ・ショックによるリスク回避の下落と予測する。日足の一目均衡表では、雲を突き抜けて下落となったが、100円前後の壁は厚く、株式の下げ止まりが確認できれば、以下の反発が想定できる。
- 1.
2016年10月28日(金)の高値105.53円(達成済)。
- 2.
2015年6月高値125.85円から2016年6月24日(金)の安値98.90円の下落に対する38.2%にあたる109.19円レベル。
米国大統領選挙後の経済イベント
米国大統領選挙後の経済イベントだが、注目は11月30日(水)のOPECである。9月末からの「米ドル/円」反発の影には、9月28日(水)のOPECで原油減産が合意されたことが大きい。しかし、その後、原油減産合意に懸念が出始めている。11月のOPECで正式に原油減産合意に至らなかった場合は、更なる株式の暴落なども予測され、トランプ氏当選の影響からも12月14日(水)のFOMCでは、完全に利上げ延期となりそうである。

遠藤 寿保プロフィール

- 遠藤 寿保(えんどう としやす)
- 98年日本初のFX事業開始から、Web広告やセミナー運営、リスク管理啓蒙などFX業務全般に携わる。数多くの一般投資家と接しながら、現在、YJFX!にてFXエバンジェリストとして情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。