スペシャル・トレンドレポート

ユーロ/米ドル上昇にむけ 欧州金融緩和は最終局面へ(竹内 典弘氏)

2016年11月8日

我々は普段の生活の中で新鮮さ(新しさ)を重視している。普段スーパーマーケットに行った時も同じ価格であれば賞味期限の長い(製造後なるべく新しい)物を無意識に、そして選択的に買い求めている。別の場面では、ようやく貯めた貯金で新車を購入したとしよう。納車された新車はピカピカで毎週のように洗車をされたという記憶をお持ちの方も少なくないだろう。

人は一般的に新鮮味のある事柄・事象には好意的だが、時の経過と共にそうした感情は薄れ、やがて過去のものとなり、そして再び新鮮なものを求めたがる。

実はこうした人々(市場参加者)の受け止め方の変化は、為替市場の変動にも色濃く反映されている。換言すれば新鮮な間(各国中央銀行の利下げ・利上げサイクルの初期)では市場参加者は変化を好感し、一方新鮮さが失われかけた時(利下げ・利上げサイクルの末期)では反応は緩慢どころか、ダイバージェンス(乖離)が発生し価格は逆行してしまう。

まず、ややこしく考えないで次のチャート(NZドル/米ドル)をご覧頂きたい。

ダイバージェンス(乖離)=変動要因の逆行現象。利下げした通貨が買われたり、利上げした通貨が売られてしまう現象。

ニュージーランド(NZ)の金融政策動向

出所:RBNZ(過去のデータより筆者作成)

上記はニュージーランド(NZ)の政策金利の推移と「NZドル/米ドル」の動きである。2008年のリーマンショック後のRBNZ(中央銀行)の急激な政策金利の引き下げ(利下げサイクルの初期という新鮮さを好感)に伴い大きく減価した(ピンクの部分)が、為替レートの下げ一巡後は利下げに全く反応せず(ブルーの部分)、大きく買い戻される展開となった。以降も同様で、ピンクで政策金利の変更に素直に反応、ブルーでは逆行となっている。

ここで読み取れるのは、2008年以降の3回の利下げ局面では、ピンクの直後に必ずブルーが遅行して出現している点だ。つまりどの局面でも初期では利下げが原動力(新鮮味)となり通貨の減価に貢献したものの、時間の経過と共に市場参加者の心に訴えかける力は尽き(新鮮味は失われ)ダイバージェンス(乖離)が発生し、やがて参加者は買い戻しを余儀なくされているという構図が極めて鮮明だ。

オーストラリア(豪州)の金融政策動向

出所:RBA(過去のデータより筆者作成)

上記はオーストラリア(豪州)の政策金利の推移と「豪ドル/米ドル」の動きである。2010年以降の利下げサイクルの中では上述「NZドル/米ドル」と同様に4回のダイバージェンス(乖離)が発生しているのが見て取れる。

オセアニア通貨の「NZドル/米ドル」、そして「豪ドル/米ドル」のチャートは中央銀行の政策金利の変更が利下げ末期では必ずしも為替レートの変動に直接影響するどころか、むしろ逆行を招いている局面があることがこれで確認された。

主要国の中央銀行の政策は金利の上げ下げだけでなく、いわゆる非伝統的金融手段と称される量的緩和、ゼロ金利、そして昨今ではマイナス金利といった未踏の域まで到達している。ここまでくると、こうした非伝統的手段でもその緩和効果が薄れてくる末期では逆行現象が出現するのではないか?といった素朴な疑問が沸いてくる。

米国は2008年以降こうした緩和路線を歩んできたが、その緩和にマーケットはどの様に反応してきたのだろうか。「米ドル/円」のチャートで検証すると、次の様になってしまった。

アメリカ(米国)の金融政策動向

出所:過去の報道より筆者作成

チャート:YJFX!外貨exより筆者作成

上記はアメリカ(米国)の金融政策と「米ドル/円」の動きである。量的緩和第1弾(QE1)並びに第2弾(QE2)では緩和効果はてきめんで米ドルの減価に大きく寄与した。しかし緩和末期となる第3弾(QE3)では、本邦におけるアベノミクス、その後の日本銀行の量的質的金融緩和の効果もあり、「米ドル/円」は更なる減価どころか、むしろ買い戻される展開で、ここでも末期のダイバージェンス(乖離)を演じてしまった。

ではアベノミクス以降の日本はどのような状況であったのか、検証してみた。

日本の金融政策動向

出所:過去の報道より筆者作成

チャート:YJFX!外貨exより筆者作成

上記は日本の金融政策と「米ドル/円」の動きである。2013年4月以降の日本銀行のよる量的質的金融緩和、並びに2014年10月の追加緩和の効果は凄まじく、黒田日銀の力をまざまざと見せつけられ、円安という恩恵を享受された方も多かったはずだ。しかし、2016年1月のマイナス金利導入(末期)後は新しい政策にも関わらず市場参加者への訴えは通じず、ここでもダイバージェンス(乖離)が発生し、「米ドル/円」は急落してしまった。

では、最後に日本と同じく量的緩和並びにマイナス金利を導入している欧州(ユーロ)のはどうなのか?

欧州(ユーロ)の金融政策動向

出所:過去の報道より筆者作成

チャート:YJFX!外貨exより筆者作成

上記は欧州(ユーロ)の金融政策と「ユーロ/米ドル」の動きである。ECBドラギ総裁は10月20日(木)の理事会後の記者会見で、「2017年3月までの量的緩和の期限延長を12月の理事会で判断する」と結論づけたが、欧州の中でも特にドイツは景気が底堅く、マイナス金利の更なる引き下げは困難とされる。ドイツ国債の枯渇が叫ばれる中では延長期間にも制約があり、仮に期間を半年伸ばすだけでそういった懸念が再び浮上しかねない。

これは欧州の2014年以降のマイナス金利付きの量的緩和の末期がそろそろ近づくということを意味し、末期となれば気の早いマーケットのことであろうからテーパリング(量的緩和の縮小)の議論がいずれ持ち上がることになる。

リーマンショック以降の金融危機対応では世界の中央銀行は積極的な緩和路線を歩み、それなりの結果を残してきた。しかしそれとて万能ではなく、緩和末期では市場参加者より足元を見透かされ為替レートの逆行を招いている。

今後の「ユーロ/米ドル」相場の行方を占う上で、欧州の金融緩和の末期がそろそろ近づきつつあることが確認された。世界の主要中銀の緩和の最終局面では何が起こってきたのか?答えはダイバージェンス(乖離)である。「ユーロ/米ドル」相場は近い将来大幅な上昇が見込まれる。

竹内 典弘氏プロフィール

竹内 典弘(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。 1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。 相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2016年10月27日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、竹内典弘氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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