スペシャル・トレンドレポート

これ以上の追加緩和は必要か?9/8「ECB理事会」に注目!(松崎 美子氏)

2016年9月7日

夏休み明けのマーケットでは、9月21日(水)にダブルで開催される「日銀金融政策理事会」と「米連邦公開市場委員会(FOMC)」の金融政策の変更の有無に、強い関心が集まっている。しかし、私が住むヨーロッパでも、今週は重要なイベントが続く。まず9月7日(水)は、英中銀総裁をはじめとする4名のメンバーが、8月に実施した大規模な緩和策と、四半期インフレーション・レポート内容について議会証言を行う。そして、翌9月8日(木)には、久しぶりに「欧州中銀(ECB)金融政策会合」が開催され、ドラギ総裁の定例記者会見という運びとなる。今回のコラムでは、「ECB理事会」について考えてみたい。

「ECB理事会」に向けた予想

今月のECB理事会に向けた予想は以下の通りである。

  • 政策金利、量的緩和策(QE)のサイズは、ともに据え置き
  • 唯一の可能性として、QE期間の延長がなされるかもしれない
  • ドラギ総裁の記者会見は、ハト派的内容になりやすい

ブルーンバーグ社がエコノミストを対象として実施したアンケート調査によると、80%以上の人たちが、近い将来ECBが追加緩和策の実施を余儀なくされると予想している。その手段としては、「QE期間の延長」が圧倒的に多く、それに続き、「デポジット金利の再カット」や「TLTRO2(条件付き長期リファイナンス・オペ)の増額」などが挙げられている。

ECBが直面している2つの相反する問題

これから書くことは、あくまでも私が個人的にずっと疑問に思っていることで、特にマーケットでは材料視されていない。しかし、この相反する2つの問題の解決策が見つからなければ、今後いくらECBが追加緩和をしても、「物価安定の維持、インフレ2%近くまでのターゲット達成」への道はかなり厳しいものとなる予感がする。

過剰流動性 1兆ユーロ超え

まず最初は、ECBが抱えている過剰流動性(Excess Liquidity)である。一般論として、流動性は低すぎても高すぎてもいけない。

低すぎるということは、マーケットに流動性が欠如していることを意味し、銀行が資金を調達するコストが上昇する。そうなると、企業や個人の借り入れ金利も当然上がってくる。市場金利の上昇は景気回復の腰を折る恐れがあるため、中央銀行は神経質にならざるを得ない。ドラギ総裁によると、「ECBは過剰流動性の下限を1,000~2,000億ユーロのレンジに設定しており、出来る限り2,000億ユーロを割らないよう気をつけている」そうだ。

その反対に、流動性が高くなれば、マーケットには溢れるほどの資金が渦巻き、時として株高などの資産バブルを招く危険性が指摘されている。最近のマーケットでは、この過剰流動性の額が1兆ユーロを越え、異常水域に入った。

データ:ECBホームページ

企業や個人貸し付けが伸びない

これだけ資金がジャブジャブに余っているのに、企業や個人向けの貸付は、あまり伸びていない。特にイタリアでは、銀行の不良債権問題が深刻化しており、国全体のクレジットフローが先細っていることも大きな理由であろう。

そこで、今回は金融機関以外の(非金融関連)企業への貸付と、個人(世帯)向けの貸付を調べてみた。まず最初は、2007年から現在までの非金融関連企業への貸付動向である。たぶんイタリアが一番悪いだろうと思っていたが、スペインの浮き沈みの激しさには、正直驚いた。ただし、この国の特長は落ちるのも早いが、回復するペースも力強い。それと比較して、イタリアは恒常的にパッとしない状態が続いている。

データ:ECBホームページ

次は、一般世帯向けの貸付状況だ。ここでも、スペインの派手さがやけに目立つ。それと比較して、ドイツは常に低空飛行だ。たぶんこれは経済の良し悪しではなく、国民性の問題で、ドイツ人は銀行から借りるという行為を、あまりしないのだろう。フランスに関しては、非金融関連企業の動向は他のユーロ加盟国と同じ動きをしているが、一般世帯については、他のどの国とも違う独特の動きとなっているのが面白い。

データ:ECBホームページ

これらのチャートから読めることは、マーケットにはお金がジャブジャブ余っているが、景気回復の手助けとなる企業や個人への貸付には廻らず、株などの投機へ流れ込んでいる可能性がありそうだ。この傾向が続けば、今後どれだけECBが緩和策を導入しても、景気浮揚は掛け声だけの政策導入になりかねない。この点について、是非ドラギ総裁の意見を伺いたいところである。

ここからのマーケット

ユーロ実効レートを見ると、今年3月からチャート上の黄色い枠の中での動きに終始している。最近になり、上昇チャンネルに入ったのか?と思わせる動きが出てきたが、まだ何とも言えない。

データ:ECBホームページ

もし9月8日(木)のECB理事会が予想以上にハト派になり、上昇チャンネルの下限を下抜けた場合は、黄色い枠の下限が次のサポートとなろう。

絶対にないとは思うので「ECB理事会に向けた予想」のところでは省略したが、「万が一」サプライズが起きるのであれば、

  1. 1.
    個別債券の購入上限の引き上げ
  2. 2.
    国債購入に関するキャピタル・キー(ユーロ加盟各国のECBへの出資比率)導入の撤廃
  3. 3.
    国債購入の最低利回りはデポジット金利と定められているが、これの撤廃

などが考えられる。

最後になるが、ECB理事会に向け、私が注目しているのがユーロ/ポンドの動向である。

現在は、水色のハイライトの中(0.83ミドル~0.88Low)での値動きとなっている。このハイライトの部分は黄緑のハイライト同様、プライスが上昇/下落を繰り返しやすいレベルだ。それに対して、黄色いハイライト部分は、一度突入すると、一気に動く傾向が強い。

9月8日(木)木曜日のECBからの発表内容により、以下の値動きを予想する。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2016年9月7日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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