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今回は、あなたの大切なお金を守るための資産管理についてお話しします。トレーダーにとって、資産がなくなる=市場からの退場を意味するため、資産管理はトレード手法以上に重要です。ぜひきちんと理解して、今後の取引の参考としてください。
資産管理の基本を知る
損益シミュレーションをする
資産管理と聞くと難解に思われる方もいらっしゃいますが、あまり難しく考える必要はありません。重要なのは、「なんとなく取引しない」ということ。いくら利益を出したいのか、いくらまでなら損失してもいいのか。資産管理には、事前の損益シミュレーションが大切です。
以下の動画は、100万円の資産をもとにした場合の損益シミュレーション例です。100万円の資金を200万円にしたい、という利益のシミュレーションと、50万円までであれば損失は受け入れられる、という損失のシミュレーションをしています。レバレッジ25倍の20万通貨で取引するのであれば、5円幅で利益を達成、2.5円幅で損失の限界に達することがわかります。
口座内の余剰額を把握する
FXでは、損失が一定量を超えるとマージンコール(追証)やマージンカット(強制決済)が発生します。マージンコールが発生した際は、追加での入金が必要となり、それが行われないとロスカットとなり、すべてのポジションは強制的に決済となります。それを避けるために、常にいくらまで耐えられるか? ということを把握しておく必要があります。
以下の画像は、追証、ロスカットが発生するタイミングをチャート上に表示したものです。

遠藤アドバイス

資産管理の基本は、入れる資金、取引量、余剰金。この3つを押さえておけば大丈夫です。では、その上でどれほど損失を許容するか? という問題が出てきますが、これについては「余剰金内で、複数回の取引が可能な損失を目指す」が基本です。1,2回で追証がきてしまうような取引ではリスクが高すぎます。失敗を挽回できるポイントで損切りを行うことが重要です。
指値・逆指値を利用して、リスクを限定する
資産管理の上では、取引方法も重要です。値動きの瞬間瞬間にあわせて注文することを成り行き注文と呼びますが、指値・逆指値というのは条件付き注文と呼ばれます。これは、◯◯円になったら買う、◯◯円になったら売る、という注文方法です。
新規の注文のいれ方例
-
1.
シナリオをつくる
まずはエントリー後の動き(値幅)を想定します。例えば「100円で買って102円で売ろう」といったシナリオづくりを行います。この際、取引する通貨量や、儲かる額についても事前に計算しておくことが重要です。 -
2.
直近のパターンを分析して注文
指値:下がり(上がり)にくいレベルの手前で注文する。「もうこれ以上は下がらない(上がらない)だろう」と考えて注文することが多く、そのためチャートの方向とは逆張りになる。
逆指値:レベル抜けを狙って注文する。「ここを抜けたら買いたい(売りたい)」と考えて注文するためチャートの向きとは順張りになる。
決済のいれ方例
-
1.
チャートの節目
チャートの動きで決済を行う。状況次第の判断となるので、利幅・損切幅は都度変わってくる。余剰金に余裕のある配分で行う必要がある。 -
2.
損益から算出
あらかじめ資産管理の観点から、1回のトレードで取る利幅と損切幅を決めて決済をする。
例)利食い10万円、損切5万円など
遠藤アドバイス

指値・逆指値注文のポイントは、「想定したすべての利幅を狙わない」ことです。天井や底はわからないので、予想の8割ぐらいで決済し、約定されないことを防ぎます。また、損切時の心構えとしては、早い段階での損切は、取引コストのようなものと捉えて次に向かいましょう。遅い段階での損切は、戦略そのものが間違っている可能性があります。立ち止まって、考え直す必要があります。
リスクリワードを設定して、損失を抑えて利益を伸ばす
リスクリワードとは、利益と損失の比率のことを指します。下の表は、利益幅を1、損失幅を1と想定して、10回取引した場合の結果を示しています。

- 利益1、損益1とした場合、勝率50%でプラスマイナス0
- 利益2、損益1とした場合、勝率40%でプラス2
- 利益3、損益1とした場合、勝率30%でプラス2
ここでわかることは、トータルでプラスになるためには、勝率ではないということ。利益をできるだけ伸ばし、損失を抑えて利益を伸ばせば、勝率が半分以下でも最終的に利益を出せる。
まとめ
- 資産管理の基本は、「なんとなく取引」しないこと。事前に損益シミュレーションが重要
- 追証・ロスカットを避けるために、常に余剰金、損失の耐えられるラインを把握しておき、一度の取引ですべてを失わないようにすること
- 指値・逆指値注文を入れる際は、シナリオを立てること
- 決済の際は、想定したすべての利幅を狙わず、予想の8割程度で決済すること
- 早い損切は取引コスト、遅い損切は戦略を見直す機会と捉えること
- 大事なことは、勝率ではなく、トータルでプラスになること。損失を抑えて利益を伸ばせば、勝率が半分以下でも最終的に利益を出せる。
遠藤アドバイス

FXは打ち出の小槌ではありません。例えばごく短期間に100万円から1億円になることは極めて難しいものです。でも、逆にいえばきちんと資産管理さえすれば簡単には資産が無くなったりはしません。リスクリワードを学び、トータルでプラスになる取引を目指しましょう。
映像でもっとFXを学ぼう
今回のテーマについて、遠藤によるオンラインセミナー動画をご紹介します。
実際のチャートを見ながら、実戦的な解説を聞くことができますので、ぜひご覧ください。
講師紹介

- 遠藤 寿保(えんどう としやす)
- 98年日本初のFX事業開始から、Web広告やセミナー運営、リスク管理啓蒙などFX業務全般に携わる。数多くの一般投資家と接しながら、現在、YJFX!にてFXエバンジェリストとして情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。
※この記事は2016年9月1日に執筆されたものです。