目次
1.マーケット・チェック〜マーケットのブル・ベア要素をチェック〜
ブル要因
ブル:米国利上げ
アメリカは利上げのサイクルに入っています。トランプ米大統領はインフレ政策を採っているため、引き続き利上げをするであろうと予測され、2017年は3回あるいは4回の利上げがあるのではないかと見込まれています。今後、アメリカの10年債の金利が2.3%から2.5%くらいまで上昇すれば、米ドル買い要因となるでしょう。

ブル: FRBバランスシート縮小
リーマンショック後、FRBは景気テコ入れのために債券や国債を買うことで市場に資金を供給し再投資を続けてきましたが、早ければ2017年内に再投資せずバランスシートの縮小に着手するという予測も出始めています。もしバランスシートの縮小を実施すれば、利上げ以上の金融引き締め効果があります。

ブル:日本企業の海外M&A
日本企業はM&Aによる海外進出のために、円を売って米ドルを買っています。これが実需の米ドル買いとなって米ドル高の要因になります。

ベア:高値圏で膠着する米株
アメリカのS&Pが高値すぎるという見方があります。20指標で9割が買われ過ぎのサインが出ており、株が落ちる時は大きく落ちるであろうと指摘するアナリストもいます。NYダウもじわじわ下げていますが、今後ロングの人が溜り過ぎたことによる調整で下がるリスクがあります。
ベア:トランプ大統領の指導力
2016年11月に米ドルと米株が上がったのですが、それが落ちてしまった要因はトランプ米大統領の指導力が低下したためであるという市場のコンセンサスがありました。
オバマケアの廃止に向けた下院での採決が実現できなかったことで、トランプ米大統領の政策実現能力への疑問符が高まりました。また、オバマケアの廃止に続く法人減税や大規模公共投資などトランプ米大統領が掲げた公約が実現できないのではないかと、トランプ米大統領の指導力が問われています。

ベア:米債金利低下
長期金利の指標である10年物米国債のチャートを見ると上値が重くなっています。米ドル/円と連動してきましたが、2.5%あたりでもみ合っています。米ドル/円の110円と米国債の2.3%、金1,270米ドルあたりがサポートとレジスタンスになっており、110円を割り込んだときに2.3%を割り込んでしまいました。しかし、今回のフランス大統領選挙の好結果を見て、今は米国債2.3%を回復しています。

ベア:地政学リスク=北朝鮮情勢
今のところ北朝鮮は核実験を実行していませんが緊張状態は続き、北朝鮮とアメリカ、中国の駆け引きは続いています。更に緊張が高まれば、円高要因になります。

政治リスク=各国で重要な政治イベント
フランス大統領選挙が警戒され、ユーロが下がるリスクに備える人が増えました。フランス大統領選挙でルペン氏が勝つリスクに備えて、2017年2月にフランス国債とユーロが売られる動きがありました。そのため、プットオプション(売る権利)が買われました。今後、マクロン氏の勝利が確定すればユーロの買い戻しが始まるでしょう。
その他、韓国大統領選挙やイラン大統領選挙、米大使館のエルサレム移転の有無の結果が、米ドル相場に影響を与える可能性があります。

2.ディーリングルーム〜西原氏の相場展望〜
ドル円・クロス円の反発
ブル要因とベア要因が交錯する中でチャートを見ると、米ドル/円、ユーロ/円、英ポンド/円は、フランス大統領選挙のあたりから上手く切り返してきました。フランス大統領選挙をきっかけにして、Brexit以後のリスクオフ相場が反発してくる可能性が出てきており、テクニカルの重要なポイントで下げ止まり反発に向かっています。また、大きなリスクであったEU解体がフランス大統領選挙の状況によって遠退いたと考えられるでしょう。

NYダウ 週足0424
NYダウは現状売られ過ぎという指標が出ていますが、今後切り返しに向かう可能性もあり、ブル要因にカウントすることができるかもしれません。

金 週足0424
金は1,270米ドル抜けて来ると金買い米ドル売りとなります。米ドル/円が110円を超え、米債金利が2.3%を回復している状態で、金が1,270ドルを超えずに落ちたので、金が下がることで米ドル/円が上がる可能性が高いです。

講師紹介

- 西原 宏一(にしはら こういち)氏
- 大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。
※この記事は2017年6月1日に執筆されたものです。