目次
1.マーケット・チェック〜マーケットのブル・ベア要素をチェック〜
ブル要因
ブル:日米金融政策の違い
日米の金融政策が真逆の状態にあります。日本は、直近4、5年間ゼロ金利政策を維持しており、新しい政策を打ち出す様子もありません。一方、アメリカは、順次、利上げを実施しています。引き続き日米の金利差が拡大するような政策を日米が基本的に採用していることが米ドル高の要因になるでしょう。

ブル:Brexit後の38.2%
米ドル/円の週足を見ると、2016年12月15日の高値が118.66米ドル/円で、Brexitが起こった時は98.90米ドル/円だったとすると、値上がり分の38.2%のところが110.60米ドル/円となります。先週の安値は110.60米ドル/円ですが、終値が111.23米ドル/円なので、38.2%を割っていません。この38.2%のレベルを割るかどうかが重要なポイントです。

ブル:本邦の新年度
本邦は、3月の期末を過ぎて4月の新年度になると相場が大きく変わることがあります。2017年3月現在の円高は、米ドルが売られていることが要因になっていると考えられますが、期末には、レパトリエーション(海外投資資金の還流)による円買いや企業の駆け込み需要による米ドル買いなどが起こる可能性があります。また、本邦だけでなく海外勢も新年度に向けて新たな動きを起こす可能性があるため、新年度からの海外勢の動向にも注目です。

ベア:米国ヘルスケア法案(AHCA)
トランプ政権がオバマケアの廃止に向けて、オバマケアの代わりとなる米国ヘルスケア法案(AHCA)を提出しましたが採決見送りとなったために、オバマケアを続けることになりました。これによって、法人税減税や大規模投資の実現が困難な状態となり、トランプ米大統領の指導力不足という評価に至っています。

ベア:G20保護主義文言を削除
2017年3月18日のG20での共同声明にて、「経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいる」と発表され、2008年G20初会合以降使われていた「保護主義に反対する」という表現が削除されました。これは、トランプ政権が保護主義的政策を採ることに影響を受けたのではないかといわれています。この保護主義文言が削除されたことは、米ドル/円に関して円高の要因となります。

ベア:原油安
原油価格が下がっていることで、ファンド勢の投げ売りによるリスクオフが生じました。ただし、この原油安がNYダウの崩れにはつながらないものの、センチメントが悪くなることにつながると思われます。これまでサウジアラビアは、減産を守ってきましたが、アメリカのシェール石油増産の動きが影響したのか、減産による価格維持よりもシェア獲得を優先しているため、今後も原油安が継続する可能性があります。

2.ディーリングルーム〜西原氏の相場展望〜
トランプ政権の政治力に疑問符?
トランプ政権の敵が増え、更に対立が増えていることで、トランプ米大統領の求心力が低下しています。AHCA法案の採決が見送られ、株高、米ドル高を目指した従来の政策実現のシナリオが崩れ始めており、トランプラリーも剥落することになりそうです。

NYダウ週足
天井をつけた可能性が高いといえ、このままだと21,000米ドルが当面の高値になります。そのため、もし4月の新年度から新しい資金が入った場合でも21,000米ドルに戻らない場合には、トランプラリーが一旦修正に入ることが予想されます。よって、買いは警戒した方が良いでしょう。

WTI週足
もみ合いでしたが大きな陰線を出して落ち始めています。今後も落ちる可能性の方が高いでしょう。

講師紹介

- 西原 宏一(にしはら こういち)氏
- 大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。
※この記事は2017年5月1日に執筆されたものです。